はじめに
「ハチミツ」は、1995年9月20日に発売されたスピッツの6作目のアルバム『ハチミツ』の1曲目に収録されています。アルバムには「涙がキラリ☆」「歩き出せ、クローバー」「愛のことば」「ロビンソン」「君と暮らせたら」などが並び、「ハチミツ」はその入口に置かれたタイトル曲です。
1990年代半ばの大きな転機を刻む作品のひとつと言えます。
そのアルバムの冒頭で歌われる「ハチミツ」は、言葉遊びの歌に見えます。
おかしな恋人/可笑しな恋人/お菓子な恋人
おかしな恋人ハチミツ溶かしていく
「おかしな恋人」という言葉が、まずひっかかります。
普通に読めば、「少し変わった恋人」という意味になります。
けれど、この曲の場合は、もっと軽く、笑ってしまうような可愛らしさを含んだ「可笑しな恋人」に近い感じがします。
さらに、曲名が「ハチミツ」であることを考えると、そこにもう一つの響きも重なります。
つまり「お菓子な恋人」。理由は最初にビスケットが出てきますので。
一人空しくビスケットの しけってる日々を経て
おかしな恋人。
可笑しな恋人。
お菓子な恋人。
この三つが、ゆるく重なっています。
変というより、可笑しみがある。
そして、お菓子のように甘い。
意地っ張りシャイな女の子 僕をにらみつける
可笑しさというのは、「甘い恋人」なのに「にらみつける」ところにも表れてます。
甘いけど、すねる。
可愛いけど、少し扱いにくい。
そういうツンデレ的な恋人の可笑しみ。
「ハチミツ」というタイトルまで含めると、この恋人は、可笑しく甘いものとしても描かれている。
ポケットとビスケットの連想
ガラクタばかりピーコートの ポケットにしのばせて
「ポケット」という言葉からは、童謡「ふしぎなポケット」も連想します。
ポケットをたたくとビスケットが増える。
子どもの歌らしい、理屈のない小さな不思議です。
「ハチミツ」の中の甘さも、それに少し似ています。
恋人との生活の中で、何か大きな事件が起きるわけではない。
けれど、何気ないところから甘いものが出てくる。
ポケットの中に、ビスケットのような小さな幸福が入っている。
ポケット+ビスケット=お菓子の歌
甘い恋人=ハニー=ハチミツ
この連想が、曲全体の空気を作りだしているように思います。
甘い生活を、言葉遊びで歌う
「ハチミツ」は、恋人との甘い生活を歌った曲に見えます。
どこかふざけていて、少し笑えて、でも親しみがある。
恋人は、甘い。お菓子のよう。
でも、ただ甘いだけではなく、可笑しい。
そういう言葉遊び的な感覚で、「ハチミツ」という曲の可愛らしさを作っているように感じます。
ハチミツという甘い比喩
「ハチミツ」というタイトルは、恋人そのものにも、恋人との生活にもかかっているように見えます。
甘い恋人との甘い時間。
その全部が、ハチミツという言葉の中に入っている。
夢のような溶け合うような時間。もしかしたら夢かもしれない。
アルバム『ハチミツ』の最後の曲「君と暮らせたら」は、
今日も眠りの世界へとすべり落ちていく
で終わります。一番最後の歌詞が眠りを表現している。アルバム全体がまるで夢の中の世界かのように。

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